研究会(研究発表会)

第56回(富山)

講演要旨

アカヒゲホソミドリカスミカメの夏期の休眠卵産下の地理的変異

新谷喜紀1・伊藤清光2・渡邊朋也3・後藤純子4・樋口博也1・高橋明彦11北陸研究セ・2北海道農研・3中央農研・4岩手農研)

アカヒゲホソミドリカスミカメは,秋に産下される休眠卵で越冬すると考えられ,雌は短日条件で休眠卵産下が誘導されることが確認されている。その一方で,Kudô & Kurihara (1988)は盛岡市での調査で,夏期にも高い割合で休眠卵が産下されることを明らかにしている。この夏期の休眠卵産下は,スズメノカタビラやスズメノテッポウなどの春に繁茂する雑草が夏に向かって枯死していくことと関係があるのではないかと考えられる。この仮説が正しいなら,春の雑草が夏になっても枯死しにくい冷涼な地域では,夏期の休眠卵産下が抑制される可能性がある。そこで演者らは,冷涼な札幌市(北緯43度)や新潟県板倉町光ヶ原高原キャンプ場(標高1000 m)を含む数地点で,定期的に夏期の休眠卵の割合を調査した。その結果,盛岡市や上越市の低標高地では夏期の休眠卵の割合は最大時で17–69% と高かったが,札幌市や光ヶ原では期間を通して休眠卵がほとんど産下されないという予想通りの結果となった。現在,各地の個体群について,寄主の状態に反応して休眠卵を産下する性質が遺伝的に異なるのかどうかを検討中である。

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2009.1.13更新