研究会(研究発表会)

第57回(石川)

講演要旨

アブシジン酸処理はいもち病に対するイネの体質を罹病化させる

古賀博則1・土肥浩二2・森 正之1、2 (1石川農短大資源研・2 CREST)

演者らは先に,接種前に低温処理したイネはいもち病に対して罹病的になることを報告した。一方,低温処理したイネは植物ホルモンの一種であるアブシジン酸を生合成することが知られている。そこで,アブシジン酸がイネを罹病的体質にしているのではないかと考え,アブシジン酸処理がいもち病菌の侵入・伸展および宿主細胞の反応に与える影響を調べた。イネいもち病菌として北1菌株を,イネ品種としてこの菌株に感受性の藤坂5号を用いた。根と葉をつけた状態のイネに20 µM のアブシジン酸を噴霧し,1時間後に胞子懸濁液を葉鞘内に注入し接種した。接種にはイネの体質が抵抗的になる7.5葉期のイネを用いた。アブシジン酸無処理の場合,被侵入細胞で褐変・壊死が起き,菌糸の伸展は抑制された。それに対し,アブシジン酸処理の場合,被侵入細胞が褐変・壊死する頻度は激減し,侵入菌糸は著しく伸展した。以上の結果から,イネ体内のアブシジン酸濃度の増加が,いもち病に対するイネの体質を罹病化させていると考えられた。

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2008.2.14更新