研究会(研究発表会)

第60回(富山)

講演要旨

マルチラインにおけるいもち病菌の拡散様式および飛散距離について

渡辺貴弘・古河 衞(福井農試)

抵抗性系統(R)の「ハナエチゼンBL3号」と罹病性品種(S)の「ハナエチゼン」を異なる比で混植した圃場において,隣接したイネいもち病多発圃場からの葉いもち病斑の密度勾配とイネ株のトラップ法による周辺圃場への飛散を調査した。密度勾配の試験区は,R:S = 0:1,R:S = 1:1,R:S = 3:1の比で混植した。多発区の伝染源は,DNAマーカーにより他の自然菌との識別が可能な本病菌株(Kyu9439013,レース047.0)を接種した「ハナエチゼン」の罹病株を植え込んだ。その後,経時的に各区の葉いもちの発病株と病斑数の調査を行った。得られた調査距離別病斑数のデータを用いて,清沢・塩見式にあてはめた。その結果,多発区から飛散したと考えられる発生初期(6月29日)での勾配係数の値は,R:S = 0:1区で0.0057,R:S = 1:1区で0.0043,R:S = 3:1で0.0151であり,R:S = 3:1が他の試験区より値が大きかった。一方,周辺圃場への飛散距離の試験は,上記の多発区を伝染源として,距離別にトラップするための「コシヒカリ」多肥区を設けた。そして,初発生と考えられる7月10日に「コシヒカリ」上に生じた罹病性病斑を採集・分離し,得られた本病菌株が伝染源の菌と同じであることも確かめた。その結果,伝染源から1回の感染好適条件で少なくとも約150mは飛散すると推定された。

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2009.12.23更新