研究会(研究発表会)

第61回(石川)

講演要旨

水田の中干しが能登半島に飛来したコウノトリの行動に及ぼす影響

井下田寛1 ・加藤秀夫2 ・中村浩二31金沢東高・2珠洲西部小・3環日本海研究セ)

2008年に,韓国で開催されたラムサール条約 (特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約) 第10回締約国会議において,「湿地システムとしての水田における生物多様性の向上」(通称: 水田決議)が採択された。能登半島には,棚田などの水田や,ため池など多くの湿地があり,これらの湿地を利用する多くの水鳥にとって,重要な生息地となっている。2008年に,能登半島に,野生のコウノトリが飛来し,約3ヶ月間,滞在した。このコウノトリの生息環境と餌動物を調べるために,日の出から日没まで,のべ7日間,警戒しない距離(数百m)から,目視により追跡調査を行った。その結果,ねぐらのアカマツを中心とする約1km2の行動圏を持ち,ほぼ1日中,採餌を行っていた。餌生物の約90%を,水田(畦,水路など)に依存していた。調査期間中に,水田の中干しが行われ,水田の水位が減少した。コウノトリが餌を捕獲する回数は減少し,コウノトリは能登半島の生息地を放棄した。水田の中干しの期間に,水田の水生生物が避難できるため池などの湿地とビオコリドーなどを創出する必要があるだろう。

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2009.12.28更新