研究会(研究発表会)

第62回(福井)

講演要旨

石川県立大学周辺での稲こうじ病発生調査と感染侵入過程の観察

熊川 剛・田中栄爾 (石川県立大学)

昨年大発生した稲こうじ病の石川県立大学周辺での発生状況調査を行った。圃場ごとの肥料・農薬の使用状況、および圃場1枚あたり10カ所で1m²範囲の病籾数ついて調査した。稲こうじ病防除の農薬が使用されていない圃場で、0〜66.9個/m²の病籾が見つかった。石川県立大学内の気象観測データを基に今年度の気象条件を調べたところ、7月下旬から8月上旬の出穂期の頃に、過去3年の平均値よりも低温・多雨・少日照時間であった。一方で、イネ体内における稲こうじ病菌(Villosiclava virens)の分布とイネ籾への侵入感染過程の解明を試みた。まず、稲こうじ病が自然発生したイネ株の各部位から全DNAを抽出し、稲こうじ病菌特異的プライマーを用いたnested-PCRを行った(芦澤ら;2005)。すると、稲こうじ病菌は病籾だけでなく、イネの各節や分げつでも存在する事が示された。さらに,eGFP発現形質転換菌株を藤田ら(1989)の条件に従い接種した。こうして発病させたイネ組織の凍結切片を作製し、落射蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、発病籾内に広がる菌糸が観察できた。また、発病していないイネの葉鞘でも菌糸が観察された。以上のことから、稲こうじ病菌はイネ植物体中に潜在的に生息していることが示唆された。

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2011.1.21更新