研究会(研究発表会)

第63回(新潟)

講演要旨

過熱水蒸気による水稲種子伝染性病害防除の検討

安達直人・塚本昇市(石川農研)

化学農薬に頼らない水稲種子消毒として温湯消毒法が普及しているが,水温上昇・維持のためのエネルギーコストがかかること,処理した種子を保存するには乾燥させる必要があることが課題である。過熱水蒸気は100℃以上に加熱された水蒸気であり,過熱水蒸気状態にするための熱エネルギーは小さく,しかも処理後も対象物が乾燥状態にあることが特徴である。そこで,過熱水蒸気を用いた水稲の種子消毒の効果を検討した。まず,発芽への影響を検討した。80℃以下では60分間の処理でも発芽率は低下しなかったが,90℃を超えると,10分間以上の処理で著しく低下した。100〜160℃では1〜2分間の処理が限界であった。次に,イネ苗立枯細菌病菌の汚染種子に対して過熱水蒸気処理を行った結果,減圧接種した種子を用いた場合は,試験したいずれの温度・時間でも実用的な防除効果はなかったが,病原菌を種子表面に付着させただけの場合は,概ね安定した防除効果が得られた。すなわち過熱水蒸気処理は,温湯消毒のように種子全体の温度を均一かつ瞬時に上昇させることはできず,発芽障害なく種子内部に入り込んだ病原菌を殺菌することは困難であると考えられた。

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2011.1.21更新