北陸病害虫研究会報
第56号(P23 – 28)
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アカヒゲホソミドリカスミカメ卵の休眠消去におよぼす低温の影響
高橋明彦・樋口博也
農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター北陸研究センター
Akihiro Takahashi and Hiroya Higuchi
National Agriculture and Food Research Organization, National Agricultural Research Center, Hokuriku Research Center, Inada 1-2-1, Joetsu, Niigata 943-0193: Effects of chilling temperature on diapause termination of eggs in the rice leaf bug, Trigonotylus caelestialium (Kirkaldy) (Heteropter: Miridae)
アカヒゲホソミドリカスミカメ休眠卵を-5〜10°Cに一定期間保存し,加温後の孵化率および卵期間を調査することにより,低温が休眠消去に与える影響を検討した。-5°Cでは処理期間の長短に関わらず,加温後に孵化は認められなかったが,0〜10°Cにおいては処理期間が長くなるに従い,孵化率は上昇した。0°Cおよび5°C処理の場合,処理日数80日間以上で孵化率はほぼ100%に達し,120日間以上の処理で孵化が斉一となった。10°C処理では,孵化率は0°Cおよび5°C処理とほぼ同じ傾向を示したが,処理日数が長くなっても卵期間にばらつきが見られた。以上の結果から,休眠消去のための適温は0〜5°C付近にあり,同温度条件において休眠発育が完了するには120日以上の期間が必要であると考えられた。10月下旬に休眠卵を半野外条件に保存し,定期的に加温して休眠状態を調査した結果,保存期間が長くなるにつれて孵化率が高まるとともに,加温後の卵期間は短縮した。野外保存開始から136日後の3月上旬以降は,孵化が斉一となり,休眠が完全に消去されていると考えられた。この結果は,120日以上の低温処理が必要であるとする室内試験の結果を裏付けるものと考えられた。
Key words:アカヒゲホソミドリカスミカメ, 卵休眠, 休眠発育, 低温処理, Trigonotylus caelestialium, rice leaf bug, egg diapause, diapause development, cold treatment