研究会(研究発表会)

第55回(新潟)

講演要旨

いもち病菌の胞子はどのようにしてイネ葉身の表面に付着するのか?

古賀博則・中谷内 修(石川農短大資源研)

イネ葉身上に落下したいもち病菌の胞子が,接種後のどの時期にどのようにして付着するかを明らかにすることは,本病の感染機作はもとより発生生態の解明にも不可欠である。人工膜を使った実験では,胞子発芽の裂開時に,そこから放出される粘質物によって,付着すると報告されている。しかし,イネ葉身の表面構造は人工膜とはきわめて異なっていることから,胞子の葉身への付着過程を,蛍光顕微鏡および走査電子顕微鏡で観察した。その結果,葉身の表皮には凹凸があり,さらにその表面には高さ2–3µmのいぼ状突起が散在しているため,発芽直後(接種 1時間後)では発芽管が短く,発芽管の先端が表皮に達することができず,胞子の多くが表皮上を浮遊しており,葉身から落下した。接種1.5時間後以降になると4µm以上に発芽管が伸展し,その先端部が表皮に到着してクチクラ層に付着しているのが観察された。発芽管先端部と表皮との間の付着部位には粘質物が観察され,それが発芽管の表皮への付着に重要な役割を果たしていると推察された。

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2009.1.8更新