研究会(研究発表会)
第55回(新潟)
講演要旨
ジャガイモの防御反応における活性酸素生成に関与するCa2+依存型タンパク質キナーゼ(CDPK-), Pto-キナ−ゼ, およびNADPHオキシダーゼ(rboh-)遺伝子の疫病菌因子による誘導発現解析
佐藤岳実1・横川和俊2・古市尚高1,2(1新潟大農・2新潟大院)
カルシウム依存型タンパク質キナーゼ遺伝子CDPK1,CDPK2,トマトのPsuedomonas属細菌に対する抵抗性遺伝子Pto,シロイヌナズナの活性酸素生成に関与するNADPHオキシダーゼ遺伝子rboh Fがジャガイモに存在することが明らかとなった(古市ら,2002)。これらの遺伝子の発現量が,ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)より単離された菌体壁成分(HWC)エリシター(100µg/ml),またはグルカンサプレッサー(100µg/ml)をジャガイモ疫病抵抗性品種リシリの培養細胞に処理し,どのように変化するのかを定量的RT-PCRにより調べた。HWC処理では,処理3時間後にCDPK1,CDPK2,Ptoの発現量が処理直後(0時間後)と比べ,それぞれ2.6倍,9.9倍,4.8倍の増加がみられた。rbohの発現量は1時間後に87倍に増加した。一方,サプレッサー処理では,HWC処理と比較するとどの遺伝子も発現が遅延し,処理3時間後の発現量においてCDPK1は73%,CDPK2は54%,Ptoは30%,rbohは92%抑制された。これらの防御関連遺伝子がジャガイモの疫病菌に対する防御反応において重要な役割を果たしていることが示唆された。また,HWCにジャガイモの防御関連遺伝子の転写を促進させる因子が存在することが示唆された。