研究会(研究発表会)
第56回(富山)
講演要旨
接種前の低温処理がいもち病菌の伸展とイネ細胞反応に及ぼす影響
古賀博則1・森 正之1,2・土肥浩二2・中谷内 修1(1石川農短大資源研・2CREST)
イネはやませなどの低温環境に遭遇すると,いもち病に罹りやすくなることが知られている。しかしこの現象に関する細胞学的な知見はほとんど得られていない。先に,非切断葉鞘裏面接種法(非切断法)を用いることで,感受性イネ品種においても,苗齢が進んだ場合には,被侵入細胞が褐変・壊死し抵抗性を示すことを明らかにした。本研究では,低温条件がいもち病菌の侵入・伸展および宿主細胞反応に及ぼす影響について調べた。イネいもち病菌は北1菌株を用い,イネ品種はこの菌株に感受性の藤坂5号(第7〜8葉期)を供試し,非切断法によって接種した。低温処理を行わない場合,被侵入細胞で褐変・壊死が起き,菌糸の伸展は認められなかった。それに対し,接種前のイネに低温処理(10°C、24時間)を行った場合は,被侵入細胞の褐変・壊死反応は観察されず,侵入菌糸は著しく伸展していた。以上のことから,低温によって宿主細胞の褐変・壊死反応が抑制され,それによって菌糸が伸展できるようになることが示唆された。