研究会(研究発表会)
第56回(富山)
講演要旨
アカヒゲホソミドリカスミカメの産卵に与える交尾の影響
高橋明彦・樋口博也(北陸研究セ)
アカヒゲホソミドリカスミカメの合成性フェロモン高濃度条件下では,雄の雌に対する定位行動が阻害され,交信攪乱による防除技術の確立が期待されている。交信攪乱による防除を考えるうえで,本種の交尾回数と産卵の関係を明らかにすることは重要であるが,交尾回数に関する報告は行われていない。そこで,実験室内において交尾を制限することにより,交尾と産卵の関係について検討を行った。羽化後,産卵開始までの期間にのみ交尾を行わせた雌(交尾制限雌)と生存期間を通じて交尾可能とした雌(対照)との間で,総産卵数,生存期間,未受精卵率の比較を行った。総産卵数は,交尾制限雌80.1個,対照雌95.7個,生存期間は,交尾制限雌16.8日,対照雌17.8日であり,産卵数,生存期間ともに両者の間で有意差は認められなかった。また,未受精卵率は,交尾制限雌5.6%,対照雌8.6%であり,交尾制限雌において受精卵率が低下する傾向は認められなかった。本試験においては交尾行動の観察を行っておらず,交尾回数は不明であるが,交尾を制限した場合にも産卵に対して負の影響は見られなかった。