研究会(研究発表会)
第56回(富山)
講演要旨
ダイズ白絹病菌の分布と夏季水田中での生存について
本多範行・岡本 博(福井農試)
ダイズは重要な転換作物と位置づけられ,福井県では3〜4年間の水田作,さらに1年間のオオムギ作跡にダイズ栽培が行われている。ダイズ立枯性病害の中で北陸では茎疫病,黒根腐病が主体とされているが,本県では年によってダイズ白絹病(Sclerotium rolfsii)の発生が6月下旬から見られ,圃場全面に及ぶこともある。本病菌は多犯性であって菌核で越冬するため,防除困難な土壌伝染性病害といえる。そこで,近年の多発原因を解析するために,菌糸体和合性グループ(MCG、mycelial compatibility)を利用し,圃場における系統の分布および水田における生存について調査を行った。その結果,多発圃場においては本菌は少数のMCGからなり,圃場が異なるとMCGの分離率は異なった。県内のダイズ8圃場で採取した白絹病菌は,6つのMCGに分類された。冷夏年(2003)に土壌中の菌核の生存について調査した結果,イネ苗移植時に水田に埋設した白絹病菌の成熟菌核の生存率は,埋設後の経過日数とともに低下する傾向が見られたが,イネ刈取りの135日後でも生存していた。一方,未熟菌核は埋設48日後には死滅した。