研究会(研究発表会)
第56回(富山)
講演要旨
イネ褐条病に対する拮抗微生物の検索と選抜菌株による細菌病発病抑制
堀 武志1・柳澤早苗2・黒田智久1・石川浩司1(1新潟農総研作物研・2新潟農業技術学院)
イネの育苗期に発生する細菌性病害を対象に数種の生物農薬が開発されているが,本県で発生する褐条病に対して卓効を示す生物農薬は無い。そこで,褐条病の生物的防除を目的として新規拮抗微生物の検索を行った。イネの種子洗浄液・浸種液,苗,穂等より細菌376菌株を分離し,褐条病菌を指標菌として,培地上の抗菌活性検定および分離菌株懸濁液への種子浸漬による育苗試験を併用し1菌株を選抜した。得られたNAB374菌株は,褐条病だけでなく,もみ枯細菌病および苗立枯細菌病に対しても,抗菌活性および発病抑制効果(防除価98以上)が認められた。また,本菌の生菌体懸濁液への種子浸漬で発病抑制効果が認められたが,死菌体の場合には効果は認められなかった。さらに本菌の種子処理条件を検討したところ,菌濃度を108cfu/ml程度とし,浸種開始と同時に24時間以上浸漬処理した場合に発病抑制効果が高かった。以上より,本菌の生菌体懸濁液を用いた種子浸漬処理は上記3病害の防除に有効であったが,稀にイネ苗の葉鞘褐変を引き起こすため,病原性や菌の同定等について今後検討が必要である。