研究会(研究発表会)
第56回(富山)
講演要旨
イネ褐色米から分離される糸状菌の年次および圃場による違い
本多範行(福井農試)
1997〜2003年の虫害粒を除く玄米着色粒発生率は0.22〜1.21%で,その内褐色米発生粒率は0.14〜0.58%であった。褐色米の発生は2000年に多く,主要な糸状菌はAlternaria alternataであった。1999年はCurvularia属菌,2001年はA. padwickii,2003年はPhoma属菌の分離率が高かった。しかし,A. alternataによる発生粒率が0.01〜0.47%であるのに対し,Curvularia属菌,Phoma属菌,A. padwickiiによる発生粒率はそれぞれ,0.01〜0.14%,0〜0.28%,0.01〜0.14%とさらに低率で,年次による差は少なかった。2000年に坂井郡の「コシヒカリ」47圃場における糸状菌別発生粒率を調査した結果,A. alternataでは圃場による差が大きかったのに対して,Curvularia属菌,Phoma属菌による発生粒率は,低率で,圃場による差も少なかった。A. padwickiiによる発生粒率もほとんどの圃場で低率であったが,一部の圃場で分離率が高かった。また,同一圃場で7月下旬に出穂した「コシヒカリ」からは,A. alternataによる発生粒率が高く,8月中旬に出穂したものではA. padwickiiによるものが高くなった。以上のことからA. alternataによる褐色米の発生は圃場における伝染源量が影響していると考えられる。