研究会(研究発表会)
第58回(福井)
講演要旨
チューリップ黒かび病の多発要因
守川俊幸1・向井 環1・多賀由美子2・高尾麻実1(1富山農技セ野菜花き誌・2高岡農改セ)
近年,8月中下旬から貯蔵中のチューリップ球根が腐敗する被害が頻発している。球根腐敗病に比べて発生時期が遅く,球根腐敗病に強い品種でも多発することから,その原因を調査した結果,黒かび病に起因することが明らかになった。次に,本病の多発要因を明らかにするため,本病の発病温度を15〜34°Cの範囲で調査した結果(品種:ミストレス,球根への胞子懸濁液の付傷接種),27°C以下では顕著な病斑拡大は認められず,30°C以上で拡大,34°Cで形成される病斑径は最大となった。7月下旬に一定期間高温条件下(30・34・37°C,4〜14日)に置いた球根は,25°Cで貯蔵した球根に比べて接種後の病斑形成頻度が高くなる傾向が認められた。また,9品種の球根に本病菌を付傷接種したところ,品種間に感受性の差異が認められ,球根腐敗病に強い品種の中には本病の病斑拡大が顕著な品種が存在した。なお,8生産者の球根から分離した本病菌(51菌株)の薬剤感受性を調査した結果,14%がベノミル剤(MIC:1,600ppm<)に,4%がトリフルミゾール剤(EC50:9〜10ppm)に耐性を示し,耐性菌の発生頻度は高いとは言えなかった。以上から,本病の多発生は温暖化による夏期の高温遭遇が引き金になっている可能性が示唆された。