研究会(研究発表会)
第58回(福井)
講演要旨
3量体Gタンパク質が関与するイネの耐病性発現機構の解析
加藤久晴1・原 修平1・梅村賢司2・小松節子3・加来久敏3・藤澤由紀子1・岩崎行玄1(1福井県立大・2明治製菓・3生物研)
イネの3量体Gタンパク質は形態形成だけではなく,病害抵抗性にも関与していることが示されつつある。野生型(WT),3量体Gタンパク質αサブユニット(Gα)を欠く矮性品種大黒d1,およびGα遺伝子のプロモーターにGαの恒常的活性型(QL)を連結したものをd1に導入した形質転換体 (QL/d1)を比較した場合,QL/d1はいもち病菌や白葉枯病菌に対する耐病性を示すことが確認された。QL/d1が示す耐病性機構に関与する遺伝子を網羅的に解析するため,マイクロアレイを用いて発現プロファイルを比較したところ,QL/d1においてperoxidase,PBZ1,キチナーゼなど複数の防御関連遺伝子の発現が上昇していることが確認され,それらの結果の多くはRT-PCRにより確かめられた。以上より,いもち病菌や白葉枯病菌に対するQL/d1の耐病性は,QLを介して複数の防御関連遺伝子の発現量が増加したことによる可能性が考えられた。QL/d1における防御関連遺伝子の発現上昇は展開中の若い葉において顕著であったが,これはGα遺伝子の発現パターンと相関していると考えられた。