研究会(研究発表会)
第58回(福井)
講演要旨
DNA欠失を利用したイネいもち病菌株OS99-G-7aの突然変異率推定法の検討
高橋真実1・平八重一之1・芦澤武人1・森脇丈治1・川田元滋1・吉野嶺一2(1北陸研究セ・2小山市)
イネいもち病菌における病原性変異の要因の一つにはDNAの欠失があり,OS99-G-7aでは,Pik品種に対する病原性獲得に連動して,個体識別マーカー内部のPot2様因子(1859bp)が欠失する(平八重ら 2004)。そこでこのことを利用したOS99-G-7aの突然変異体率の推定法を検討した。元株DNA中に混在する変異株DNAをリアルタイムPCRで定量するため,Pot2様因子の領域を挟むようにプライマーを設計して,増幅断片を元株で1962bp,変異株で103bpとした。そして,元株由来の長い断片の増幅を抑制するため,95°C10分間の変性後,95°C10秒間を62°C20秒間のステップを繰り返す設定でPCRを行った。この条件で、元株マーカー領域を挿入したプラスミドを鋳型としたところ全く増幅が見られないことから、本法は,元株DNA存在下で変異株DNA存在下で変異株DNAを特異的に検出可能であることが確かめられた。次に元株のDNA 100ngに異なる量の変異株DNAを混合してPCR反応をおこなったところ,0.5から0.005ngまでの増幅曲線は,検量線として利用可能であった。以上から、本法により,OS99-G-7aのPik品種に対する病原性の突然変異率は,5×10-5以上の場合に推定可能と考えられた。