研究会(研究発表会)
第59回(新潟)
講演要旨
アカヒゲホソミドリカスミカメ合成性フェロモンの交尾阻害効果の検討
高橋明彦1・樋口博也1・福本毅彦2・望月文昭2(1北陸研究セ・2信越化学)
合成性フェロモンによるアカヒゲホソミドリカスミカメの交尾阻害の可能性を室内試験により検討した。試験は,アクリル製ウンカ飼育用ケージを用いて行い,フェロモン処理区には合成性フェロモン85mgを含有するポリエチレンチューブを設置した。供試虫は,羽化後3日齢の未交尾個体とし,雌雄1,2,4対をケージ内に放飼し,24時間後に回収した。交尾の判定は,回収した雌を解剖して,生殖器内の精子の有無によって行った。雌雄1対の放飼では,対照区の交尾率52%に対し,フェロモン処理区は12%であり,交尾率は有意に低下した。しかし,2対および4対の場合は,対照区と処理区の交尾率に有意な差は認められなかった。本種の交尾行動における臭覚の影響を検討するために,雄の触角を切除して交尾率を調査した。その結果,触角の切除によって交尾率は明らかに低下するものの,20〜30%の個体において交尾が認められた。以上の結果から,本種の交尾行動,特に雌雄間の近距離のコミュニケーションにおいて,フェロモンの存在は必須ではないと考えられた。