研究会(研究発表会)
第60回(富山)
講演要旨
畑地および水田周辺で発生したバッカクキンのrDNA系統解析による寄生性の推定
田中栄爾(石川県立大学)
石川県の水田および畑地周辺のスズメノテッポウ,ヒエガエリ,コヌカグサ(レッドトップ)に発生した麦角病からバッカクキンを採取した。これらは宿主や分生子形態がClaviceps purpurea var. alopecuriの特徴と一致した。これまで北陸地方からヒエガエリとコヌカグサのバッカクキンの報告例はないため,これらがオオムギ等作物への感染源になるとも考えられる。バッカクキンは寄生性によって系統が分かれることが分かっている。そのため,本菌株を含むバッカクキンのITS1-5.8SrDNA-ITS2領域の塩基配列を解読して分子系統解析をおこなった。その結果,スズメノテッポウ,ヒエガエリ,コヌカグサのバッカクキンの塩基配列は一致し,水辺を好むバッカクキン菌株とグループを形成した。これらはオオムギに寄生する系統であることから,オオムギ麦角病の感染源となることが推定された。一方,岐阜県と石川県から採取したススキのバッカクキンC. panicoidearumについても同様に解析したところ,ソルガムのバッカクキンC. sorghicolaと極めて近縁であった。