研究会(研究発表会)
第60回(富山)
講演要旨
石川県におけるフタオビコヤガの合成性フェロモンへの誘殺消長
藪 哲男・黒田 晃・桶本敏男・八木敏江(石川防除室)
フタオビコヤガは,稲の葉を食害し,多発すると収量に影響を及ぼす。近年増加傾向にあり,被害が広範囲に拡大している。本種の発生予察にはこれまで予察灯が用いられてきたが,越冬世代成虫,第1世代成虫の誘殺数は極めて少なく,効率的な発生予察は困難であった。そこで,試作された本種の合成性フェロモントラップ(以下フェロモン)の発生予察への利用を検討するため,フェロモンと予察灯への誘殺消長を比較した。フェロモンへの初飛来は5月2半旬で,予察灯と比較してほぼ1か月早かった。フェロモンの誘殺ピークは,5月上旬,6月下旬,7月中旬,8月中旬及び9月上旬の5回確認され,越冬世代,第1世代が明確に捉えられた。一方,予察灯の誘殺ピークは,7月中旬と8月中旬の2回で,8月中は予察灯の方がフェロモンより多く誘殺された。フェロモンはフタオビコヤガの各世代を明確に捉え,これまで把握が困難であった越冬,第1世代の発生を把握できることから,予察灯に代わる発生予察法として有望と考えられる。