研究会(研究発表会)
第61回(石川)
講演要旨
真性抵抗性遺伝子Pi-ztを持ったイネとその感受性の同質遺伝子系統における籾いもち感染過程の蛍光顕微鏡及び走査電子顕微鏡による比較観察
金曽正秋1・塚本昇市2・芦澤武人3・有江 力4・古賀博則1(1石川県立大学・2石川農総研・3北陸研究センター・4東京農工大)
これまで真性抵抗性遺伝子を持ったイネの葉身では病斑を形成しないいもち病菌が,穂では病斑を形成することが多数報告されている。しかし,抵抗性イネの穂でのいもち病菌の侵入・伸展,病斑形成過程についてはほとんど明らかにされていない。そこで演者らは今回,いもち病菌の籾感染に注目し,GFP 遺伝子を導入したいもち病菌を用いて,感染過程の比較観察を行った。供試したイネはいもち病抵抗性遺伝子Pi-zt遺伝子を持った抵抗性系統(ZTR)と,その感受性の同質遺伝子系統(ZTS)を用い,ZTRとZTSの出穂1週間前,1〜2日前,出穂1〜2日後,1週間後の4時期の籾について,接種試験と感染過程の比較を行った。籾への接種にはCMC(Carboxymethyl Cellulose Sodium Salt)法を用い,接種80時間後にカミソリで接種籾を約1mmの厚さに切断し,その断面を蛍光顕微鏡と走査電子顕微鏡で観察した。その結果,ZTR、ZTSともにどの時期の籾でも侵入菌糸が伸展しているのが認められた。また,いもち病菌菌糸が伸展している籾個体の罹病率は,出穂前後4時期のZTRとZTSの比較では,差異が認められなかった。これらのことから,顕微鏡レベルでもZTRとZTSの籾いもち感染に,差異がないことが明らかとなった。