研究会(研究発表会)
第62回(福井)
講演要旨
富山県におけるPythium arrhenomanesによるイネ苗立枯病の発生と発病要因
守川俊幸1・戸田 武2・三室元気1・岩田忠康1 (1富山農総セ農研,2秋田県大生物資)
2009年春に,富山県内の17地点の育苗施設で採取された苗立枯病罹病苗からPythium属菌を分離し(81菌株),rDNA-ITS領域の解析を行ったところ,77菌株がP. arrhenomanesと同定され,P. graminicolaは検出されなかった(戸田ら,2009)。P. arrhenomanesと同定された菌株は,いずれも膨状の遊走子嚢を形成したが,菌株によっては卵胞子の形成を認めなかった。分離菌はいずれも病原性を有し,接種により根腐れや立ち枯れを引き起こした。また,育苗培土のpHが酸性(pH4.8)よりも中性(pH7.3)で発病程度が高く,搬出後の低温遭遇が発病を助長する傾向が認められ,旧来のP. graminicolaによる苗立枯病の発病要因と一致した。80菌株のメタラキシル感受性(EC50)は10%V8ジュース寒天培地上で0.6–7.7 ppm(平均2.9ppm),1/2CMA上で0.02–0.8ppm(平均0.2ppm)であり、いずれも感受性菌であると判断された。さらに,2菌株を用いた薬剤防除試験において,ヒドロキシイソキサゾール・メタラキシル剤の播種時施用に防除効果が認められた。今後は、低温遭遇と発病(病徴)の関係をP. graminicolaと比較しながら解析したい。