研究会(研究発表会)
第62回(福井)
講演要旨
アズキゾウムシのオスによるメスの交尾抑制
山根隆史1・宮竹貴久2(1北陸研究セ・2岡山大院環境)
メスが複数回交尾し、精子間競争が生じる場合、オスにとって自分が交尾したメスが将来に他オスと交尾する機会を減らせるなら繁殖のうえで適応的である。いくつかの昆虫ではオスがメスの交尾を抑制する物質を付属腺のような内部生殖器に有し、交尾の際に精子と共に送り込む。Callosobruchus属の甲虫はメスの多回交尾の頻度とそれに関連する繁殖形質の進化に関して主に性的対立の視点からのモデル昆虫として注目されている。我々はアズキゾウムシ、C. chinensisのオスの内部生殖器全体の水抽出物にメスの交尾行動を抑制する効果があることを見出した。この水抽出物を大まかな分子量で分画した成分と器官別に抽出した成分の交尾抑制作用を調べた実験からこれらの交尾抑制成分は精巣に存在すると考えられる即効性の作用を有する低分子(分子量3 kd以下)の成分と付属腺に存在し遅効性の高分子(分子量14kd以上)の成分からなると考えられ、これらの成分が交尾後のメスの交尾抑制を引き起こすと推測される。