研究会(研究発表会)
第62回(福井)
講演要旨
アカヒゲホソミドリカスミカメ性フェロモントラップの有効範囲の検討
高橋明彦・樋口博也(北陸研究セ)
水田に設置したアカヒゲホソミドリカスミカメの合成性フェロモントラップにおける誘殺数は,その水田における成虫の発生量を反映していることが明らかにされている。しかし,トラップからの距離と誘殺数の関係は明らかにされておらず,フェロモントラップの有効範囲は不明である。そこで,標識再捕試験によるフェロモントラップの有効範囲の推定を試みた。水田あるいは休耕田に設置したフェロモントラップを中心として,一定距離毎に異なる標識を施した雄を放飼し,放飼後3日間トラップに誘殺された個体の標識の有無を調査した。トラップからの距離別の捕獲率データに基づいて,距離と捕獲率の関係を表す最適なモデルを探索的に決定した。最も当てはまりが良いと考えられたのは,ロジスティック回帰モデルであり,このモデルに基づいて算出したトラップの有効範囲(effective sampling area)は,6.22m²であった。また,風向風速が比較的安定した条件で,風下側からのみ標識虫の放飼を行った結果,放飼後6時間以内に捕獲された雄は,ほとんどがトラップからの距離1〜2mの地点から放飼された個体であった。これらのことから,本種性フェロモンの誘引範囲はきわめて狭いと考えられた。