研究会(研究発表会)
第62回(福井)
講演要旨
Ralstonia solanacearum biovar3によるスイゼンジナ青枯病(新称)の発生
安達直人・塚本昇市(石川農研)
スイゼンジナ(Gynura bicolor)は葉裏の鮮やかな紫色が特徴のキク科多年草作物であり、石川県内では金時草と呼ばれ、加賀野菜の一つとして親しまれている。2009年8月石川県金沢市で、スイゼンジナに導管の褐変を伴う萎凋症状が発生した。スイゼンジナにおける類似症状としてはハイイロホソバノメイガの幼虫が株元を食害することに起因する立枯症状が報告されているが(濱崎ら、2007)、本症状では食害は発見されなかった。褐変部を水中で静置させると、細菌泥の漏出を肉眼で確認できることから、萎凋症状は細菌性病害によるものと推察された。常法により細菌の分離を試みると、TZC培地上に、中心が淡紅色で流動性がある乳白色コロニーが分離された。分離菌株をスイゼンジナの地際茎部へ注入接種すると病徴が再現され、同様の特徴の細菌が再分離されることから、本菌が原因菌であると考えられた。また、本菌はトマトの幼苗に対しても萎凋症状を引き起こした。細菌学的性質を検討した結果、Ralstonia solanacearum biovar3と同定した。本邦において、R. solanacearumによるスイゼンジナの病害は未記載であることから、病名をスイゼンジナ青枯病と提案する。