研究会(研究発表会)
第63回(新潟)
講演要旨
ムギ類赤かび病菌の感染に対するシロイヌナズナの抵抗性に関与する遺伝子の同定
水野大輔1・西内 巧2・加藤智朗2・浅野智哉2・古賀博則1・原浩之1(1石川県立大・2金沢大学学際科学実験センター)
ムギ類赤かび病菌は,コムギやオオムギの最重要病原菌の1つであり,被害は単なる減収だけには留まらず,カビ毒(トリコテセン)汚染によって人畜に深刻な健康問題を引き起こすことが知られている。ムギ類赤かび病の防除対策は未だ不十分であり,カビ毒を低減する解決策も見つかっていない。しかし近年では,赤かび病菌がモデル植物のシロイヌナズナに感染することが見出され,ムギ類で行うことが難しかった分子レベルでの研究が可能となった。そこで本研究では,赤かび病菌の生産するトリコテセンが宿主シロイヌナズナに対し病原性因子として作用することに着目し,トリコテセン応答遺伝子をマイクロアレイ解析によって同定した。そして,110個の応答遺伝子のシロイヌナズナT-DNA挿入変異体を用い,赤かび病菌の感染の違いを評価した。それらの中で,植物特有の転写因子であるNACファミリーに属するanac079遺伝子の欠損変異体は,野生株に比べ病徴および赤かび病菌量の割合が減少していたことから,赤かび病菌に対して抵抗性が向上したと考えられた。従って,anac079遺伝子はシロイヌナズナの野生株において,赤かび病菌の侵入や増殖を助長させるような働きをすることが示唆された。