研究会(研究発表会)
第63回(新潟)
講演要旨
WRKY45を過剰発現させたイネにおけるいもち病抵抗性発現過程の細胞学的解析
澤田美幸1・土屋苑美1・栗原孝行2・水野 聡1・高辻博志3・高原浩之1・古賀博則1(1石川県立大学・2金沢医科大・3生物研)
イネに抵抗性誘導剤を処理すると転写因子WRKY45が活性化し,これを恒常的に発現させたイネはいもち病に対して極めて強い抵抗性を示すことが報告されている。本研究はイネ品種日本晴にWRKY45を過剰発現させたイネ(WRKY45-ox)および発現を抑制したイネ(WRKY45-kd)のいもち病菌に対する細胞反応を明らかにすることを目的とする。いもち病菌を接種したWRKY45-oxを光顕および電顕で観察した結果,いもち病菌の侵入・伸展時に宿主細胞の抵抗性反応が見られた。この抵抗性の発現は過酸化水素の集積と密接に関与していた。一方,WRKY45-kdでは,抵抗性誘導剤(PBZ)を処理しても無処理区と比較していもち病菌に対する抵抗性反応の増大は認められなかった。以上のことから,WRKY45がPBZによる抵抗性誘導のキーとなる遺伝子であることが確認された。さらにいもち病菌の侵入・伸展部位では,過酸化水素の集積を伴う細胞反応が起き,その結果,菌の伸展が阻害されるものと考えられた。