研究会(研究発表会)
第63回(新潟)
講演要旨
ダイズを加害するマメシンクイガの発生消長とその被害
樋口博也1・望月文昭2(1北陸研究セ・2信越化学)
マメシンクイガは,幼虫がダイズ子実を食害する害虫であり,近年,北陸地域でその発生が顕在化している。2009年と2010年に雌の合成性フェロモン剤を誘引源としたトラップをダイズ圃場に設置し,雄の誘殺数を調査することで成虫の発生消長の把握を試みた。トラップの誘殺消長から,新潟県上越市で成虫のダイズ圃場での発生は,8月下旬から増加傾向を示し9月上旬に発蛾最盛期を迎え9月中下旬までその発生は継続すると考えられた。2009年に比べ2010年のほうが発蛾最盛期が遅くなったが,これは2010年は7,8月の気温が高く推移し,その影響で羽化が遅延したためではないかと考えられる。被害調査を行ったところ,幼虫に加害された被害粒の割合は,2009年が53.8%,2010年が21.3%であり,2010年は成虫発生量が多い傾向にあったにも関わらず,被害粒は2009年より少なくなった。雌にはダイズ莢の成熟度に応じた産卵選択があり,若い莢に産卵数が多く,子実肥大期終期の莢には少なくなる。2010年は,高温によりダイズの生育は促進されたが成虫の羽化時期が遅くなり,産卵に適した莢が少なくなったことが,2009年に比べ被害粒が少なくなった要因の1つではないかと考えられる。