研究会(研究発表会)
第63回(新潟)
講演要旨
育苗箱処理剤の広域施用による穂いもち防除の省略
塚本昇市・安達直人(石川農研)
育苗箱処理剤(以下,箱剤)を広域に施用することで穂いもちの発病抑制効果が高まることが知られている。そこで,石川県において箱剤の広域施用によって穂いもちの本田防除の省略が可能か否か検討した。箱剤はプロベナゾール剤を用い,周囲を山で囲まれたいもち常発地の圃場(計2.0ha)をもれなく処理し,本田防除は行わないことで効果を確認した。なお,うち1筆では,出穂始期〜傾穂期の約2週間スプリンクラー散水し,穂いもち発病を促した。その結果,葉いもちの発病は,7月中旬までは全く認められず,下旬以降一部の圃場で発病が認められたが,地域全体では出穂直前の病斑数が0.13個/株と少なかった。この発病程度は,近隣の個別防除の地域より低かった。穂いもちは,葉いもちが発生した圃場を中心に認められたが,全体では被害籾率で0.2%と低かった。これは,近隣の本田防除を実施した地域と同程度であった。スプリンクラー散水した圃場の穂いもち発病は,0.3%と個別防除地域でスプリンクラー散水した圃場の発病(15.5%)と比較して低く,広域施用による効果が認められた。以上より,箱剤を広域施用することで穂いもち対象の本田防除を省略することが可能と考えられた。