研究会(研究発表会)

第64回(富山)

講演要旨

石灰窒素の施用が稲こうじ病の発生に及ぼす影響

芦澤武人・高橋真実・荒井治喜(中央農研)

イネ稲こうじ病の発生量は,土壌中の菌密度と相関がある(Ashizawa et al. 2010)。そこで,石灰窒素がシアナミドを放出する特性に着目し,本病の発生に及ぼす影響を検討した。前年に厚壁胞子を散布した北陸研究センター内の水田圃場において,土壌を耕起後湛水し,窒素成分で2kgあるいは4kgの粒状石灰窒素を散布し,その1日後に代かきを行い,1週間湛水した。出穂期の異なる7品種を手植えし,黄熟期に株あたり病粒数を調査した。その結果,石灰窒素施用区では,同量の窒素成分を含む化成肥料施用区より発病が少なく,窒素成分が2kgより4kgの方が発病は多かった。一方,給排水口を兼用しているセンター内1圃場,石灰窒素を散布1日後に耕起・代かき作業を行った現地2圃場で発生抑制効果が認められなかった。この原因として,いずれの圃場も土壌pH が低い傾向にあり,石灰窒素施用後のpH上昇の発現を抑制している可能性が考えられた。また,現地2圃場では石灰窒素の施用日に多量の降雨等で石灰窒素が流亡した可能性も考えられた。以上から,石灰窒素の施用は本病の発生抑制に利用できる可能性が示されたが,高い発病抑制効果を得るにはさらに要因を解析し,効果的施用法を解明する必要があると考えられた。

第64回(富山)講演要旨タイトルに戻る

Copyright © The Association for Plant Protection of Hokuriku. All Rights Reserved.
2013.9.20更新