研究会(研究発表会)
第64回(富山)
講演要旨
北陸研究センターのダイズ圃場における炭腐病の発生と黒根腐病との重複感染の可能性
高橋真実・越智 直・荒井治喜・中山則和・加藤雅康・芦澤武人・大野智史(中央農研)
2011年9月中旬、北陸研究センター(新潟県上越市)の試験圃場において、ダイズの立枯症状が発生した。はじめに葉色低下を認めてから2日間で急速に萎凋し、1週間後には枯死した。黒根腐病を疑ったが、病気の進行が早いこと、すべての株で葉に病斑を生じずに一挙に黄化したこと等、黒根腐病と一致しない点があった。罹病株を抜き取り診断した結果、ゴボウ根症状やオレンジ色の子のう殻が観察されて、明らかに黒根腐病と判断される株が多かった。しかし、主根の表皮下、皮層、木部に多数の黒色の菌核が存在する株や、菌核と黒根腐病菌の子のう殻が混在している株が認められた。菌核は球形で黒色を呈し、大きさが約50μmであった。この菌核のrDNAのITS領域を解析した結果、ダイズ炭腐病菌の配列と一致した。炭腐病は、乾燥高温の気象条件で発生することが知られている。当圃場では、症状を確認した日の20日前から降雨がなく、最高気温が30℃を超える日が多く、炭腐病の発生に好適であったと推察される。接種試験が必要であるが、病徴と急激な発病経過は海外での炭腐病の報告と一致しており、立枯症状には黒根腐病菌以外に炭腐病菌が関与した可能性が考えられた。